<薬事日報>FIH試験で死亡、薬との因果関係否定できず  エーザイの抗てんかん薬、厚労省が調査結果公表

エーザイ社のPhase1試験で死亡する事例が生じた。服用後の異常行動にて脳挫傷を伴い亡くなったという問題が発生しました。Phase1試験というのは、非臨床試験を終えたあと、初めて人に投与する段階の最も慎重かつ安全性を確認しながら進めないといけない段階になります。特に抗癌剤のPhase1試験は実際の癌患者を対象として行いますが、その他の薬は正常な成人男性を対象として実施する決まりとなっております。

今回は抗精神神経薬のため、成人男性に対して投与が実施されていたもので、こうした試験の際には経験のある施設、医師が選定されることがほとんどです。

 

今回の墨田病院もおそらくその手の道で経験がある施設だったのだと思います。現に薬事日報の中でも重大な逸脱はなかったとのことが記載されています。

 

Phase1試験で死亡例が生じるとどのようなインパクトがあるのかというと、安全性を脅かす可能性があるので、試験中断、中止などといったところを視野に入れた慎重な検討が必要となります。また死亡とまでいかなくても、重大な有害事象が生じた際も同様の検討がGlobalレベルで実施されます。今回の件について詳細は分り兼ねますが、治験薬が精神に影響を与え(主訴のある幻聴、幻覚など)、電柱からの飛び降り事故につながったのだと思います。

 

この医薬品の開発を今後どうするのかはエーザイとPMDAとの相談になるのだと思いますが、臨床試験を実施するうえで安全性や被験者の主訴をしっかりと確認していくことがいかに大事かを改めて考えさせられるものだと思います。

 

エーザイが実施した国内臨床第1相(P1)試験で治験薬の投与を終えた20歳代男性1人が死亡した問題で、厚生労働省は29日、治験薬と死亡の因果関係が「否定できない」とする調査結果を公表した。治験実施医療機関の墨田病院(東京都)やエーザイGCP省令の規定から大きく逸脱する所見は認められなかった一方、さらなる配慮が必要だった点はあったとして指導する方針。また今回の事案を踏まえ、開発初期の治験を行う際の今後の改善点について関係団体に周知する考え。

 男性が参加したのはAMPA受容体拮抗剤E2082(開発コード)のファースト・イン・ヒューマン(FIH)試験。エーザイの自社品で、神経伝達物質グルタミン酸のAMPA受容体への作用を阻害するのが特徴。同社の「フィコンパ」の後継品に位置付けられ、てんかんなどの神経疾患治療薬として開発が進んでいた。安全性などを検討するために2017年12月に始まった試験は単回投与試験と反復投与試験の2つのパートで構成。20歳から85歳までの健康な成人男性118人が参加していたが、他の参加者に重篤な副作用は認められていない。